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itoshinロゴ | ホームページ制作、ロゴデザイン、群馬県太田市のデザイン事務所「ITOSHIN」

デザインとは「かっこよくする事」ではない

デザイン開発における根幹は「何のためのデザイン(クリエイティブ)か?」と言うことだ。発注側、受注側ともに気をつけないと、クリエイティブは「間違った方向性」に導かれてしまう。適切なクリエイティブ制作を依頼主、クリエイターの両方向から考えてみた。

 

「かっこ良く」は何も言ってないのと同じこと

デザインの受託開発はクライアントの要望を聞いた上でベストな提案をして行くのがぼくの信条としてある。

例えば健康食品のwebサイトのだとすると、「商品の特性から年配の方にアピールしたい」「先ずはお試しサンプルの申し込みを増やしたい」などの要望が上がってきたとする。

その場合、「年配向けの落ち着いたトーン、文字は大きめ、コンバージョン(サンプルの申し込み)はフローティングバナーでサイドに固定」など問題解決を前提とした具体的な提案が可能となる。

ここには「依頼主の要望(課題)をデザイナー(クリエイター)が解決(提案)するという明確な関係性があるのだ。

この関係性は患者(依頼主)と医者(デザイナー)の関係性に似ている。依頼主は様々な問題(課題)を抱えておいり、それを解決するのがデザイナーの仕事ということになる。

一方で依頼主によっては、単に「かっこ良く」「クールに」「スタイリッシュ」にという形容詞のみが要望として上がってくる場合があるのだ。

依頼主の言う「かっこ良く」などの形容詞は単に「良い感じにして」というニュアンスの場合が多いので体外聞き流すのだが、「良い感じにする」のは先ずプロとして当たり前ということになる。

つまり「かっこ良く」や「スタイリッシュ」というのは要望ではないので何も言ってないのと同じことになる。

デザインの役目は課題解決

仮に「かっこ良く」や「スタイリッシュ」がデザイントーンの話だったとしても、「スタイリッシュ」にするかどうかはデザイナー(クリエイター)が考える部分だとぼくは考える。

というのも場合によっては、あえて「スタイリッシュ」で無いトーンにして「敷居が高いと感じさせない」様なケースもあるからだ。(例えばフォントを太い丸ゴシックにする、太い罫線を使う、マージンをやや狭くする、など)

「かっこ良く」や「スタイリッシュ」は課題解決のための手段であり、医者の場合だと「くすり」という事になる。

医者が患者に指示されて「くすり」を出したらどうなるだろうか? 仮にそういう医者が居たとしても、患者に責任を持っていると言えるだろうか?

つまりデザイナーの仕事は「目的(課題)から導き出された課題解決ということになる。

デザインとは計画であり意図すること

つまり企業の問題解決を担う仕事としてのデザインは「要望通りにスーツを仕立てる」等の「個人向けの仕事」とは根本的に考え方が異なるということなのだ。(もちろん個人向けとは言えベストな提案をする場合もあるとして)

スーツを要望に応じて「仕立て」という仕事は、既にフォーマル用の服としてデザインされているスーツのスタイル(色・カタチ・フォルム)を決める行為ということになる。

一方で企業向けのwebサイトをデザインするというは「問題解決の為の計画し、目的達成を意図した画面設計し、最終的に色や形などのスタイルを決める」という様に問題解決を含んだフローということになる。

その意味で、課題解決の意図から外れた意味の無い要素や装飾は「カッコいい」としても置くべきではないし、置いたとしたら、それはもはや「デザイン」とは言えないだろう。

意味のない要素や装飾は置くべきでない

webデザインであれば、課題解決のための、「意図のある要素、意図のある配色、意図のあるグラフィック、意図のあるユーザーインターフェース」になっているべきなのだ。

もし説明できない要素があったら取ってしまった方が良い。罫線一つでも入れるべきか、取るべきかは熟考すべきであって、無くて済むのなら無い方がシンプルで良いということになる。

クリエイティブの正しい方向に導くのがデザイナーの仕事

課題解決の為の意図したデザイン。これは実に当たり前のことなのだが、そもそも「何のためのデザインか?」という事がプロジェクトが進む中で曖昧になり、クリエイティブの方向性が間違ったモノになっていくケースは少なからずある。

この原因は(得にプロジェクトが大きくなるとあり得るのでが)、主に依頼主側の主観や好み、最悪の場合は民主的に多数決で、という問題解決から外れた恣意的な意思決定にある場合が多い。

逆にクリエイター側が単にクライアントの御用聞きになってしまい、「仕立て屋」の様に依頼主の好み、主観で仕事をしてしまう場合にも方向性のズレが生じやすい。

デザイナー、クリエイター側は、これらの暴走を論理的に諭し正しい方向に導くのも重要な仕事であり、それが出来ないというのは医者でいうと「ヤブ医者」という事になる。

最後に

デザイナー、クリエイターは、依頼主の問題解決が仕事である。

問題解決を置いてきぼりにして、単なる御用聞きとなり「依頼主側の要望通り仕立てる」だけのオペレーショナルな仕事をしてはいけない。

逆に依頼主側も問題解決のためのデザイン、クリエイティブの発注であるとう事を理解しなければならない。

双方が対等な立場でディスカッションを重ねながら最適な「お互い納得の行く(良い感じの)クリエイティブ」を創って行くのが理想的なのだ。