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itoshinロゴ | ホームページ制作、ロゴデザイン、群馬県太田市のデザイン事務所「ITOSHIN」

デザインという言葉の誤解

WHAT IS DESING

「デザイン」という言葉は実際には「幅広い意味」を持っているが、人によっては狭い意味で「見た目(形状や色)」を指す事が多いと感じる。言葉の認識が人それぞれに違うとあらゆる場面で不都合が発生する。「デザイン」という言葉の誤解を解き、誰もが共通の意味をイメージ出来るようにしたい。

 

「見た目=デザイン」という誤解

「デザイン」という言葉を聞いてどの様なイメージを思い浮かべるだろうか?日本では「デザイン」という言葉は「意匠」という翻訳が当てられており、「形状や色、模様」などの「見た目そのもの(外観)」を意味することが多く、またそういう認識の人も多い。

もちろん「見た目そのものがデザイン」とうのはある意味では間違いではないが、その場合「見た目(外観)」は一定の目的を持ったモノであり、その「目的を達成するための外観」ということが前提となる。

肝心なのはその「目的」の部分であり、外観のみ抜き出して「デザイン」としてしまうの多少乱暴な表現ということになってしまう。

デザインとスタイルの違い

例えば洋服のデザインで考えてみると、

  • 「スーツ」はフォーマルなシーンやビジネスでの着用を目的としたデザイン
  • ウェディングドレス」は結婚式で綺羅びやかな花嫁の演出を目的としたデザイン
  • 「スウェット」はスポーツや軽い運動などを目的として動きやすさや軽さを重視したデザイン

などの様に「~を目的としたデザイン」という文脈が成り立つ。

さらに「スーツ」であれば、「色や模様、シルエット」などの「スタイル」を選ぶ(スタイリング)事で、目的をさらに細かく特化したり、細分化する事が可能となる。

つまり「スーツというデザイン」は様々な「スタイル」を持っており、消費者は「スタイリング」で細かな要望を満たす事が可能となる。

多くの人々はこの「スタイル」の部分を取り出して「デザイン」と呼ぶ事が多いと感じる。

この「スタイル」は「デザイン」の一部なので確かに「デザイン」と呼んでも差し支えないが、「色や形は目的を達成する為のスタイルである」という認識は持ち合わせた方が良い。

これを理解してないと、洋服本来の目的であ「着ることで自分を素敵に演出する」という事から外れた「全く似合わず周囲を不快にする」様な服を選んでしまうことになる。

例えば、「有名人が着ていたから」とか「占いでラッキーカラーだった」などの見当違いの理由で服を選んでしまうと、こういった事も起こるだろう。

服の選択というのは実際難しい部分もあるが、TPOをわきまえて(目的)且つ、自分の特徴を知っていれば(似合うスタイリング)的確な選択(デザイン)が可能なので、そうそう間違った服を選ぶという事は無い筈だ。

「デザイン」とは大枠の目的を方向づける部分、「色や形、フォルムなどのスタイル」を決定する「スタイリング」はさらに細かな要望を満たす部分、という理解をしたい。

スタイルの選定を間違えると目的は達成できない

洋服のスタイルを間違えても「似合ってないね」とか「場違いだね」という事で済むが、企業のロゴやパンフレットwebサイトなどの場合は、そもそもの目的を達成できない。

例えば「20~40歳の都会的なキャリア志向の女性をターゲットとしたコスメのwebサイト」といった場合、目的は「商材の魅力を際立たせ、ターゲットに関心を持たせる」という事になる。

そこに「商材であるコスメの特徴」、「競合他社との差別化」、「国内市場か海外市場か」などの細かな要件を考慮した上でスタイルを決定して行くというフローが生まれる。

こうったクリエイティブを制作する過程で良くあるのが、そもそもの目的を無視した「個人の好みや主観」やそれらを背景とした「多数決(民主的な決定?)」とった見当違いのスタイル決定を行ってしまうとう事だ。

これを洋服で例えるならターゲットに合う「スタイリッシュなパンツスーツ」を仕立てていたのが、インパクトが無いという理由で「ゴシックドレス」に変更(発注者の趣味で)という感じだろうか。

当初のターゲット「20~40歳の都会的なキャリア志向の女性」にはアピールしないこともないだろうが、かなりターゲットがボヤケた中途半端な制作物になってしまうことが予想できる。

「デザイン」は動詞として使うとしっくりくる

「ターゲットがボヤケた中途半端な制作物」、これは「中途半端なクリエイティブ(制作物)」なのだが、「中途半端なデザイン」と言う場合もある。

もちろん「中途半端なデザイン」でも間違ってはいないが、今回の例で中途半端なのは「スタイリング」という事であり、全体のデザイン(目的、ターゲットの設定)は的確であったがスタイリングが適切でなく、クリエイティブが中途半端になったという事になる。

具体的には「20~40歳の都会的なキャリア志向の女性をターゲットとしたコスメのwebサイト」という意思決定の部分が「デザイン(動詞)」なのであり、制作物は様々にスタイリングした「クリエイティブ(名詞)」という事になる。これはデザインと目的がセットである、という認識であれば自然と理解できると思う。

先日サッカーの試合で解説者が「今のは明確にデザインされたフリーキックですねぇ」という様なことを言っていたが、日本的は「意匠」という訳からはみ出した使い方だと感じた。

意味としては「各選手の動きが緻密に連動した意図をもったフリーキック」ということだろう。この解説者はおそらくサッカーを通じて海外の文化に造詣が深いのかもしれないが、デザインという言葉を本来の「目的達成のための思考」の使っているのである。

反対に「デザインされてないフリーキック」であれば「当てずっぽうで放り込んだ一か八かのフリーキック」という事になる。(ロシアワールドカップのベルギー戦(日本VSベルギー)の最後で行ったアレだ)

この様に「デザインされた~」「デザインされてない~」という使い方だと、必ず「目的」の部分に注意が向くので言葉が正しく使われ誤用が無くなることになる。

最後に

「デザイン」という言葉に限らず、言葉というものは正しく運用されないと誤解を生み、意思疎通が上手く行かなくなり混乱を招くことになる。

クリエイティブ制作の現場でよくある「デザインとスタイルの混同」という誤解も、意思疎通のすれ違いを生み見当違いの制作物を生み出す原因となり得る。

デザインという言葉の誤解を無くし、正しく理解する事でこれらの問題も少なからず解決に向かうことを願う。