「ブランディグ」は大企業やメーカーのモノと思われがちですが本当にそうでしょうか?今本当に「ブランディグ」が必要なのは、むしろその個性を世に出し切れていない「中小企業」だと感じます。ブランディグとは何か? ブランディグの本質とは? 改めて考えてみたいと思います。
そもそも「ブランド」とは何か?
「ブランドと言うとグッチとかエルメスとか何か高級そうなヤツだよね?」世間の「ブランド」に対する印象はこんな感じなのかと思います。
これはある意味では合っていますが、ブランドの認識としては本質的には正しくはありません。『グッチ』や『エルメス』はもちろんブランドですが、「高級そうだからブランド」という事ではないのです。
元来ブランドとは「家畜に入れた刻印」の事であり、どこの誰が所有する家畜かを区別することが目的でした。そのうち「どこそこの牛は良い乳を出す」、「肉が良い」など家畜品質の差別化に繋がって行ったのだと想像できます。
そこから転じて現在では、「他と差別化され独自のストーリーや歴史やコンセプトを持ち合わせたモノやサービス又は企業そのもの」をブランドと呼ぶ様になっています。
グッチやエルメスはこれらの特徴を高いレベルで兼ね備えたメーカーである故に、古くから「ブランド」として認識されてきました。
では「ブランディング」とは何か?
このブランドというモノは雑草の様に放っておいて自然と芽生えるというモノではありません。
ブランドとしての情報を発信し、ある程度の年月をかけて醸成させ、徐々に世間に認知されて行く。これらの過程を経て、ブランドへの共感・信頼を高めるマーケティング戦略を「ブランディング」と呼びます。
具体的には「それと分かるロゴ、色や形、キャラクターの提示(見え方)」、「TVCMや雑誌などのマスメディアを活用するなどして、コンセプトや歴史の告知(広告)」、「ショップやサービスによる共通体験の提供」などを通じて世間にブランドを浸透させるフロー、ということになります。
例えば『ユニクロ』や『スターバックス』などは世界的なブランディングに成功した例であり、何かの偶然で今のような世界中で愛されるブランドになったのではなく、「戦略的にそうなった」のです。
またブランディグは必ずしもスタイリッシュで洗練された印象操作だけで行うものではありません。マクドナルドの様な「親しみ訴求」、ドン・キホーテの様な「ワクワク感訴求」など、企業の特色やコンセプトに応じた形でブランド価値を醸成する場合もあります。
ブランディグとはコンセプトの表明
「笑顔で接客」という一見当たり前のことを「スマイル0円」としてコンセプト化することで共通の体験とし認知される。これが信頼感や安心感の訴求となり、『マクドナルド』は世界中で愛される存在となっています。多少の不祥事があってもやはりマクドナルドのブランド力は揺るぐ事がなく「強固のブランド力」を持つと言う事が分かるでしょう。
また特殊な例だと、『ドン・キホーテ』の店内がゴチャゴチャしているのは「宝探し的なワクワク感」というコンセプトを戦略的に押出し、「買い物の楽しさを演出することで、単なるディスカウントスーパーとの差別化」に成功しています。
他ではあまり見ない変わった商品が「一押し」だったり、通常「あり得ない高さの棚」に商品を置くのも、「宝探し」というコンセプトに基づいた演出なのです。
実際「激安の殿堂」は「さほど安くない商品」も多数あるのですが、それにも関わらずファンが根付いているが「強いブランド力の」為せる技なのかと考えられれます。
これらの戦略が世に浸透し根付くことで、コモディティ化(同業他社との類似)から脱却した強固なブランドとなり得るのです。
ブランディングは大企業特有のものではない
ここまでの例では、ブランディグは一見すると大企業特有のモノと思われがちですが、実際には「中小企業にこそ必要なマーケティング戦略」だと感じます。
なぜなら現代はモノが溢れ全てに行き渡り、あらゆる場面でコモディティ化(同質化)が進んだ状態であり、大企業に限らずあらゆる企業が自社の特色を意識して表に出さなければ「大勢の中で埋もれてしまう」からです。
製品やサービスが「良いモノ」であっても、黙っていては誰にも気づかれなかれば存在しないのと同じなのです。中小企業にとっては、かつての様に「大企業の下請けとして注文通りの良いものさえ作っていれば良い」、という時代ではありません。
また中小企業経営者の「人がこない」、「後継者がいない」という嘆きを耳にしますが、ブランディグ戦略で魅力的な企業であることをアピールできればこちらも解決する可能性は高いのです。
それは分かったとして、「ブランディングはお金がかかるよね?」という部分を心配される方も多いでしょう。
しかし大企業が巨額の資本を投じるマスメディアでのマーケティング部分は、現代ではSNSや既存のWEBサービスで十分賄うことができます。
また中小企業のブランディング戦略は大企業の様に、世の中全ての人に浸透させる必要は全くなく、そのサービスやプロダクトを必要としている人にだけに「ピンポイントで知ってもらえば良い」のです。
「当たり前」を表に出すのが中小企業のブランディグ
例えば町工場であれば「1ミクロン単位の金属加工が可能」や「あらゆる形状のネジを1つからでも発注可能」など、長年やっているので中の人には「当たり前」すぎて気づかない様な事や出来ることがあるかと思います。
これらの様な「内部的には当たりの事だが、実際には企業の特性と考えられる事項」を探し出し、webサイトやパンフレットなどにコンテンツ化する。これらをSNSや様々なwebサービスで告知していくなどが具体的な施策となります。
また普段の業務などでも、ブログなどで発信して行けばブランドロイヤリティの向上(親しみや信頼が増大)が見込めます。
この様な「当事者にとっての当たり前が、実は外から見たら興味深い事」などをコンテンツ化し必要としている人に情報を届けるいう事は、れっきとしたブランド戦略であり、これを続ける事で企業規模に関わらず、そのブランド力は高まります。
これらを継続的に行うことでブランド価値が上がって行けば、競合他社との差別化により無駄な価格競争に巻き込まれる心配もなくなり、本来の業務の質をさらに上げる事が可能となり、ビジネスの継続的な発展を見込めることでしょう。
最後に
現代は情報過多でモノが溢れる時代であり、何事も主張しなければ埋もれてしまう時代です。
また昨今では企業に限らず「個人のブランディング」という事も注目されています。ブランディングはもはや企業だけの話ではないのです。
SNSで強力な影響力も持つインフルエンサーなどは個人であっても大企業と対等に協業する時代にもなりました。
インターネットは世の中全て序列を変えつつあります。大企業、中小企業、個人、こういった括りは単なるラベルに過ぎず本質的なヒエラルキーではないのです。
現代は、明確なビジョンを持ち、世に愛され、必要とされる企業や個人、こそが強固なブランドとなる時代なのだと思います。